2017年の端末動向
目次
2016年を振り返る
2016年は本格的に格安SIMの普及に入った1年だと感じている。キャリア間でのMNP転出入数が減少し、MVNO(格安SIM)への流出が本格的に始まり、各キャリアの四半期決算発表でも、回線契約、端末販売以外に固定回線や、電気、ガスなどのインフラとのコラボにより顧客の囲い込みに躍起になっているように感じる。また、総務省による「実質0円」端末に対する指導で、指導以降に発売されるハイエンド端末は軒並み高額になった。今後もこの流れは変わらないと予測する。
2016年中に販売されていた端末の各種ベンチマークスコアより、antutu benchmarkスコアを元に端末搭載パーツをそれぞれクラス別に記載した。下の表はそれぞれ、搭載 SoC やディスプレイ解像度、カメラ性能等、スマートフォン購入時に比較するであろう搭載パーツをクラス別に列記したものだ。
ハイエンドレンジ(antutu:100,000Score~)
SoC | Snapdragon 820,821 / A9,A10 Fusion / Kirin 960 |
ディスプレイ | UHD~WQHD ~ FHD |
搭載メモリー | 3GB ~ 4GB |
内部記憶容量 | 16GB ~ 256GB |
カメラ性能 | 1220万画素 ~ 2300万画素 |
その他 | Hi-Res対応、指紋等生体認証、メタルフレーム |
価格帯 | ¥48,384- ~ ¥126,000- |
注目すべきは、ハイエンドクラスに2015年に発売された iPhone 6S に搭載されている A9 チップが1年経過後も未だにハイエンドの性能を堅持していることだ。iPhone の性能は1年経過後も十分にハイエンド性能を堅持しているので、24カ月契約期間満了時でも十分満足に操作できる端末であるといえるだろう。また、価格も約5万円~10万円オーバーとかなり幅があることが特徴的だ。
ミドルハイレンジ(antutu:50,000~100,000Score)
SoC | Snapdragon 430,615,617,625,652,808,810 / Helio X20 / Kirin 650,950,955 |
ディスプレイ | WQHD ~ HD |
搭載メモリー | 2GB ~ 4GB |
内部記憶容量 | 16GB ~ 64GB |
カメラ性能 | 1200万画素 ~ 2300万画素 |
その他 | Hi-Res対応、指紋等生体認証、メタルフレーム |
価格帯 | ¥27,864- ~ ¥93,312- |
2015年~2016年にかけて発売されていた端末に搭載されたハイエンド向け SoC である Snapdragon 808,810 が、1年経過でミドルクラス程度の性能まで落ちている。このクラスで注目すべきは、ハイエンド並の価格ながら性能が及ばない端末と約3万円の価格でこのクラスに食い込む性能がある端末が混在しているところだろう。
ミドルローレンジ(antutu:30,000~50,000Score)
SoC | Snapdragon 430,615,617 / MT6737,MT6750T,MT6753,MT6755 |
ディスプレイ | FHD ~ HD |
搭載メモリー | 2GB ~ 3GB |
内部記憶容量 | 16GB ~ 32GB |
カメラ性能 | 1310万画素 ~ 1600万画素 |
その他 | メタルフレーム、指紋等生体認証 |
価格帯 | ¥14,385- ~ ¥67,392- |
2016年はローエンドモデルながら、FHDディスプレイや指紋等の生体認証機能搭載端末が登場してきた。端末もバックパネルが樹脂等の低コスト素材から、ガラスやフルメタルフレームなど用いるため、高級感も伴っている。最安価格もミドルクラスの約半額ということもローエンドの所以だが、メールやウェブブラウジング程度の利用前提なら十分に選択肢に入りうる性能だ。また、ちょっとした撮影等にも活用でき、万が一にも手から滑り落として壊れたとしてもあきらめのつく金額といえる。
ローエンドレンジ(antutu:~30,000Score)
SoC | Snapdragon 210,410 / MT6735,MT6737 |
ディスプレイ | HD ~ WVGA |
搭載メモリー | 1GB ~ 2GB |
内部記憶容量 | 8GB ~ 16GB |
カメラ性能 | 500万画素 ~ 1300万画素 |
その他 | 樹脂製バックパネル、バッテリー交換可能なモデルも多い |
価格帯 | ¥12,800- ~ ¥37,692- |
この価格帯の端末では、メール、ウェブブラウジングが何とかできる程度の性能と考えてもらいたい。スマートフォンとして利用するにはアプリ等の追加が前提となるが、記憶容量が少なくレスポンスも遅いため多少の忍耐力が必要になる。24カ月利用なんてもってのほか、メイン端末故障で修理中に利用するか、サブ端末としての利用、純粋な電話機としての利用であれば我慢できる範囲と思われる。そして恐ろしいことに、ローエンドモデルより¥1,500-程度安い端末から、ミドルクラス端末を購入してもおつりがくるレンジまで高い端末が混在している。このエントリークラスの端末は、回線契約時に端末を購入する必要がある方向けといえるのかもしれない。
2017年を予測
それぞれ各レンジが1ランクずつ、下方へズレてくることは間違いない。(例:ハイエンド帯→ミドル帯、エントリー帯→販売終了)
MVNO事業者(格安SIM)も、競争が激しさを増すため取扱い端末の独自性を出すことも予想される。エントリーモデルでも生体認証機能が搭載され、ディスプレイもFHD化が進むと予測する。一方、ハイエンドモデルは、ディスプレイの高解像度化、省電力化がさらに推し進められることになるだろう。また、端末サイズはあまり変わらず、ディスプレイサイズの大型化の流れもあり、ディスプレイ占有率も高まることが予想される。また、SoC 性能は順調に伸びていくことが予想できる。デザインやハード面では、今年はあまり大きな変化は期待できないかもしれない。